2017/04/10刷毛を切り出す

拭き漆で酷使し、毛先がボロボロになってしまった漆刷毛の切り出しを行いました。
漆刷毛の切り出しとは何ぞやといいますと、本職用に漆刷毛というのは鉛筆のように新しい毛先を削り出すことができるのです。

漆刷毛の毛は人毛や馬などの獣毛です。それを特別な漆で板状に固め、そこに薄板を貼り合わせてできています。
手順は次のような感じです。
①写真のように古くなった毛の部分を鋸で切り落とす(1→2枚目)。新しい毛が見えます(3枚目)
②鋸とノミを使い、形を作ります(4枚目)。
③毛はこの状態の時にはカチカチに固まっており、そのまま使うことはできません。
金づちで優しく叩いてほぐしていきます(5→6枚目)
④ほぐすことができれば、毛の間に溜まったごみをきれいに洗います。

こうして、また使い続けることができます。
昔は本通しと言って、刷毛の端から端まで毛が通っているものが多かったようですが、最近は毛の材料不足で、半分までしか毛が入っていない半通しや3分の1通しなども多いようです。

また興味深いのが、切り出したばかりの刷毛は調子が出ないということです。新品の刷毛も同じです。
私自身は刷毛の使用経験や塗りの経験も浅いので、実感としてはあまりわからないのですが、要は毛の切り口が尖り過ぎていて塗り心地が良くないと言われています。なので、しばらくは下塗りなどに使って、毛が慣れてきたころに本塗りの作業に戻す、なんてことをするそうです。

普段の生活では新品=最高の状態と認識されますが、工芸の世界はそうとも限らないのがなんとも面白いです。