2024/04/10リミッター

4月になりました。
私は以前、月の前半は決まった職人仕事があると書いたことがあると思いますが、この4月は発注がいつもの倍ほどの容量でしかも多くを在庫の無い新商品が占めることになり、制作の負担が非常に大きいことになってしまいました。こればっかりは仕方ないですし、むしろ仕事を沢山いただけて有難いことではあるのですが、なんとかして15日ごろまでに終わらせて将棋の仕事にもかからねばなりません。

そこで今月は大幅な残業を解禁して、午前1~2時までの残業をほぼ毎日やっています。いつもでしたら機械は21時くらいまで、その他の加工も23時くらいでやめておくのですが、今月は久しぶりにリミッターを解除して仕事しています。

20代の中頃は、体力があったので9~21時まで勤め先の仕事をして、そこから午前4時まで工芸展の作品作りをする、みたいなことを3週間くらい続けても平気でしたが30を過ぎて、子供が生まれて以降は体力が無くなったり、家庭の時間もあり最近はだいぶ制限しています。

ちなみにどうでもよい情報ですが、どんなに頑張っても完徹はしないように、朝日が昇る時間までには就寝するようにしており、4時ごろを残業のリミットに設定しています。暗いうちに一度寝た方が体内時計がリセットされて、リズムの狂いがまだマシだと考えています。あまり参考にはならないですが。。。

こちらの写真は3/31に盛り上げをした長禄書です。4月の後半に残りの半面を盛上げて完成させたいです。

2024/03/306年

独立して、税務署に開業届を提出したのが2018年4月2日。まもなく丸6年ということになります。個人事業ではありますが、会社の場合は開業して3年で半分の会社が倒産するなんて言われますので、よく生きてる方だと思います。とは言っても、親や家族、周りの人たちに大いに助けていただきながらですので、全然実力ではありません。さらに毎年この季節は色んな税金、保険、会費の出費が集中し大ピンチです。はやくキャッシュフローを改善したいものです。。。

こちらは先日砥ぎ出した長禄書。研磨を進めています。中国黄楊の杢ですね。前回のブログで、木地が反っていたのでしっかり乾燥させて続きをという話を書きました。いくらかは改善しましたが、強い杢になるとちょっと湿度が変わるだけ木が動いてしまい、カラカラに乾燥しているにも関わらず番手を上げる度に反りを感じるような駒もあり、ちょっと苦労しています。

駒づくりを始めて数年は砥ぎは水研ぎで行っていましたが、10数年前からは完全に空研ぎに移行しました。ペーパーの目詰まり以外ほとんどの点で空研ぎの方が良いと考えています。その一つに木地の反りにくさがあります。木地は水を吸うときに反り、水を吐き出した時にも反ります。出入りで反りは逆なので概ね相殺しますが、いくらかでも動かない方が良いと思います。また砥げている部分と砥げていない部分も空研ぎでないと把握できない部分もあります。

色々突き詰めると空研ぎになるのですが、最大のデメリットはペーパーの目詰まりによって木地に逆に傷をつけるリスクがあり、それを避けるために頻繁にペーパーの清掃や交換を行う必要があります。水研ぎなら1枚あれば1、2組研磨できたものが、空研ぎだと1組で2,3枚、1200や2000番になると1組砥ぐ間に何枚も消費し、1枚数十~百円とはいっても中々の金額になってしまいます。

最初にキャッシュフローの話をしていたからでしょうか、ついお金の話で終わってしまいました。
数十円のペーパーを廃棄するのも勇気がいる作り手には、数千万や数億円がぽんと動く世界は全く想像がつきません。

2024/03/20サビの研ぎ出し

久しぶりに盛り上げ駒を制作します。
現在の工程はサビで埋めたところです。3回に分けて埋め込み、ムロでしっかり乾燥させます。

研ぎ出しの目安は表面を爪で引っ掻いてみて、白っぽい筋が付くようであればしっかり固まっているので研ぎだせます。一応注意ですが、サビで埋めた翌日とかにこれをやってしまうとサビを削り取ってしまう可能性がありますし、未乾燥のサビが爪の間に入ってカブレます。あくまで数日~1週間は硬化させた後という前提でお考え下さい。

研ぎ出すペーパーはコバックスの240番。粗目ですが、硬いサビもガンガン研げます。サビの研ぎ出しは一旦240番で字母紙の表面まで下して、追加でムロで乾燥させてから400~600番あたりで木地まで研ぎ出す手順で行っています。

研ぎ出した後です。書体は長禄でした。

見ての通り研げていない部分が沢山あります。杢が出た木地でして、ムロの湿度で木地が曲がるためこういう現象になります。ここから無理に進めると字が細くなりますから、木口の目止めを落として、湿度の低い環境にしばらく置いて木地の狂いを取ります。これは仕方ない現象なので、早く進めたいのも山々ですがぐっとこらえます。

そういえば、昨年取材を受けた「明日への扉」の撮影中でも同じような場面で研ぎ出し時に研ぎきれないシーンがあって、先ほどの内容を説明していましたらディレクターさんの目がキラッと光りまして、ミスとまでは言いませんが苦労ポイントとしてカットが使われまして、「乾燥がわずかに足りず―――」というナレーションが入っていました。番組のコンセプトとしては師匠との関係性、まだ師匠にしかできないとか、師匠にアドバイスを求めるようなことも重要な要素だったんですが、私の場合は師匠がおらず独学での制作だったため、どこかでそういうシーンが必要だったのかな、と勝手な想像ながら回想しています。

2024/03/10黒柿の製材

前回のブログで紹介した黒柿の盤を製材しました。
大きな塊のままでは歪みが多く、割れがたくさん入ってしまう懸念があるとのことで、16センチあった厚みを3.5センチを4枚と残り数センチという具合に切り分けることにしました。

 ちょっと分かりにくいですが、帯鋸という機械で挽き割ろうとしています。帯鋸で切れる最大の幅が40センチでしたので、オーバーしてしまう皮や白太の部分はカットして切ることにしました。ただできるだけ捨てたくなかったので、ほぼ40センチギリギリで挽き割ることに。
そうして欲張ったせいで、40㎏(多分)くらいの盤を持ち上げながら挽き割ることになり、あまりに大変すぎる作業に挽き始めてすぐ後悔。しかし後には引けず、通常数秒で切るところを何分もかけて切りました。


何枚か大きな板を取ったところで、あまりに大変すぎるのと、中央付近は割れがはいっていたりしたため盤を半分の幅にカット。そこから再び厚みを落とす作業を再開しました。
一緒に写る私と比べてもだいぶ材料がコンパクトになりましたね。このときはだいぶスムーズに挽くことができています。

木というのは面白いもので、乾燥する前の生木の状態の方が軟らかいというか刃が入りやすいです。黒柿は堅い木ですが、生木でしたのでスルスルと切れます。その性質を利用して主に海外ですが、生木で椅子や挽物(器など)を作るノウハウがあります。

製材後はこんな感じになりました。黒い模様がゴンと入る感じで木でした。厚みは3.5センチです。駒箱などにするにはまだ厚いですが、駒台の脚にする余地を残しています。

触るとしっとりをしていて、急に風にあたったりすると途端に割れてしまうので、大急ぎでボンドを塗布。ボンドの目止め効果で、急激な水分の蒸発を防いで干割れを緩和します。銘木屋さんの木は大抵ボンドが塗ってあるので、真似てみます。

ボンドが乾いたのち、倉庫に桟積み(写真が無くてすみません)して、何年間か乾燥させます。無事に乾いて、作品にできる日がくるのが待ち遠しいです。

2024/02/29黒柿を買いました

今月初め、お付き合いのある材木店さんから電話がありました。
「黒柿の厚盤がありますが、どうですか?」
20年の夏に初めて訪れた材木店で、その際にも黒柿のブロック材を買い求めたことを覚えてくださっていたようで、ご連絡を頂きました。やや遠方ですので、写真を送っていただき、良さそうでしたので購入。

届いたのがこちらです。写真では大きさが分かりにくいですが、幅45cm、長さ70cm、厚さ16cmと大きな厚盤で、しかも生木ということでかなり重いです。測っていませんが、40㎏くらいあったかもしれないです。木表の方は樹皮と苔が残っており、配送業者のお兄さんも「これは何ですか?」と不思議そうにしていました。

材木は買い方にいくつか種類があり、一番一般的なのは乾燥材の板で買う、もうひとつは今回のように生木で買う、さらに丸太で買うというパターンもあります。
リスクと価格が反比例の関係にあり、単価が最も安いのが丸太買いですが、中身が見えない。乾燥材は木目を直接確認でき、またすぐに使えます。しかし高いです。今回の生木の厚盤はその中間で、乾燥材よりは安いですが、中身が完全には分からないのと、無事に乾燥させることができるかどうかがこちら次第。ひどければ割れがたくさん入って使い物にならないリスクがあります。

先ほどの材木店さんに相談すると、やはり盤のまま放置すると割れやすいとのことで、なるべく早く薄い板にして乾燥を促進した方がよいとのことで、次回は製材です。