2024/04/30必要条件 |
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前回のブログで、私の彫りの拘りを書きました。また同様のことを昨年取材を受けた「明日への扉」でも取り上げていただきました。 私にとっては薬研の谷を寄せる彫りは色々試行錯誤しながらやっていることの一つでしたが、初めて駒づくりに取り組む人が最初にその情報に触れると、それが”必要条件”になるのだなと。 同様のことで、SNSなどを拝見していると駒づくりをされる方でサビを作る際、黒漆を使う方や胡粉などを混ぜる方がおられます。これも駒づくりの情報の中で誰かが行っていることで、必要条件とまではいかなくてもある程度標準化したのだろうと推測しています。サビの作り方にも決まりは無いとは思いますが、漆の仕事をされる方でそのような配合をする人は少ないと思います。黒漆の製造プロセスや胡粉のそもそもの用途を調べるとサビには合わないと私は考えていますが、それ自体ももはや私が必要条件に囚われているのかもしれません。 |
2024/04/20彫りのこと |
直近では宗歩好の彫り駒を制作しています。 ここ数年、彫る際にやっているのは文字の流れを意識して薬研の谷を真ん中以外にもしていることです。20歳くらいの時は手に任せて彫っていたと思います。25歳くらいの時は薬研の谷をとにかく左に寄せる彫りをしていたこともあります。 現在は真ん中を通す以外に、場所によって線のどちらかに寄せてみたり、丸い部分は回転する軸の位置を工夫したり色々やっています。これが正解かどうかは分かりませんが、各時期に共通しているのはただ彫るだけにならないようにするにはどうすればよいか?とは考え続けています。機械と同じ仕事を人が時間を掛けてやっては意味が無いですし、かといって手仕事の味などと言って適当にやっているようでもいけない。 別に奇をてらおうというつもりはなく、純粋に良い駒にしたい、またわざわざ住谷にご依頼くださった方へのご期待に副いたいという思いで彫りに没頭しています。 |
2024/04/10リミッター |
4月になりました。 そこで今月は大幅な残業を解禁して、午前1~2時までの残業をほぼ毎日やっています。いつもでしたら機械は21時くらいまで、その他の加工も23時くらいでやめておくのですが、今月は久しぶりにリミッターを解除して仕事しています。 20代の中頃は、体力があったので9~21時まで勤め先の仕事をして、そこから午前4時まで工芸展の作品作りをする、みたいなことを3週間くらい続けても平気でしたが30を過ぎて、子供が生まれて以降は体力が無くなったり、家庭の時間もあり最近はだいぶ制限しています。 ちなみにどうでもよい情報ですが、どんなに頑張っても完徹はしないように、朝日が昇る時間までには就寝するようにしており、4時ごろを残業のリミットに設定しています。暗いうちに一度寝た方が体内時計がリセットされて、リズムの狂いがまだマシだと考えています。あまり参考にはならないですが。。。 こちらの写真は3/31に盛り上げをした長禄書です。4月の後半に残りの半面を盛上げて完成させたいです。 |
2024/03/306年 |
独立して、税務署に開業届を提出したのが2018年4月2日。まもなく丸6年ということになります。個人事業ではありますが、会社の場合は開業して3年で半分の会社が倒産するなんて言われますので、よく生きてる方だと思います。とは言っても、親や家族、周りの人たちに大いに助けていただきながらですので、全然実力ではありません。さらに毎年この季節は色んな税金、保険、会費の出費が集中し大ピンチです。はやくキャッシュフローを改善したいものです。。。
駒づくりを始めて数年は砥ぎは水研ぎで行っていましたが、10数年前からは完全に空研ぎに移行しました。ペーパーの目詰まり以外ほとんどの点で空研ぎの方が良いと考えています。その一つに木地の反りにくさがあります。木地は水を吸うときに反り、水を吐き出した時にも反ります。出入りで反りは逆なので概ね相殺しますが、いくらかでも動かない方が良いと思います。また砥げている部分と砥げていない部分も空研ぎでないと把握できない部分もあります。 最初にキャッシュフローの話をしていたからでしょうか、ついお金の話で終わってしまいました。 |
2024/03/20サビの研ぎ出し |
久しぶりに盛り上げ駒を制作します。 研ぎ出しの目安は表面を爪で引っ掻いてみて、白っぽい筋が付くようであればしっかり固まっているので研ぎだせます。一応注意ですが、サビで埋めた翌日とかにこれをやってしまうとサビを削り取ってしまう可能性がありますし、未乾燥のサビが爪の間に入ってカブレます。あくまで数日~1週間は硬化させた後という前提でお考え下さい。 研ぎ出すペーパーはコバックスの240番。粗目ですが、硬いサビもガンガン研げます。サビの研ぎ出しは一旦240番で字母紙の表面まで下して、追加でムロで乾燥させてから400~600番あたりで木地まで研ぎ出す手順で行っています。 研ぎ出した後です。書体は長禄でした。 見ての通り研げていない部分が沢山あります。杢が出た木地でして、ムロの湿度で木地が曲がるためこういう現象になります。ここから無理に進めると字が細くなりますから、木口の目止めを落として、湿度の低い環境にしばらく置いて木地の狂いを取ります。これは仕方ない現象なので、早く進めたいのも山々ですがぐっとこらえます。 そういえば、昨年取材を受けた「明日への扉」の撮影中でも同じような場面で研ぎ出し時に研ぎきれないシーンがあって、先ほどの内容を説明していましたらディレクターさんの目がキラッと光りまして、ミスとまでは言いませんが苦労ポイントとしてカットが使われまして、「乾燥がわずかに足りず―――」というナレーションが入っていました。番組のコンセプトとしては師匠との関係性、まだ師匠にしかできないとか、師匠にアドバイスを求めるようなことも重要な要素だったんですが、私の場合は師匠がおらず独学での制作だったため、どこかでそういうシーンが必要だったのかな、と勝手な想像ながら回想しています。 |