2024/03/10黒柿の製材

前回のブログで紹介した黒柿の盤を製材しました。
大きな塊のままでは歪みが多く、割れがたくさん入ってしまう懸念があるとのことで、16センチあった厚みを3.5センチを4枚と残り数センチという具合に切り分けることにしました。

 ちょっと分かりにくいですが、帯鋸という機械で挽き割ろうとしています。帯鋸で切れる最大の幅が40センチでしたので、オーバーしてしまう皮や白太の部分はカットして切ることにしました。ただできるだけ捨てたくなかったので、ほぼ40センチギリギリで挽き割ることに。
そうして欲張ったせいで、40㎏(多分)くらいの盤を持ち上げながら挽き割ることになり、あまりに大変すぎる作業に挽き始めてすぐ後悔。しかし後には引けず、通常数秒で切るところを何分もかけて切りました。


何枚か大きな板を取ったところで、あまりに大変すぎるのと、中央付近は割れがはいっていたりしたため盤を半分の幅にカット。そこから再び厚みを落とす作業を再開しました。
一緒に写る私と比べてもだいぶ材料がコンパクトになりましたね。このときはだいぶスムーズに挽くことができています。

木というのは面白いもので、乾燥する前の生木の状態の方が軟らかいというか刃が入りやすいです。黒柿は堅い木ですが、生木でしたのでスルスルと切れます。その性質を利用して主に海外ですが、生木で椅子や挽物(器など)を作るノウハウがあります。

製材後はこんな感じになりました。黒い模様がゴンと入る感じで木でした。厚みは3.5センチです。駒箱などにするにはまだ厚いですが、駒台の脚にする余地を残しています。

触るとしっとりをしていて、急に風にあたったりすると途端に割れてしまうので、大急ぎでボンドを塗布。ボンドの目止め効果で、急激な水分の蒸発を防いで干割れを緩和します。銘木屋さんの木は大抵ボンドが塗ってあるので、真似てみます。

ボンドが乾いたのち、倉庫に桟積み(写真が無くてすみません)して、何年間か乾燥させます。無事に乾いて、作品にできる日がくるのが待ち遠しいです。

2024/02/29黒柿を買いました

今月初め、お付き合いのある材木店さんから電話がありました。
「黒柿の厚盤がありますが、どうですか?」
20年の夏に初めて訪れた材木店で、その際にも黒柿のブロック材を買い求めたことを覚えてくださっていたようで、ご連絡を頂きました。やや遠方ですので、写真を送っていただき、良さそうでしたので購入。

届いたのがこちらです。写真では大きさが分かりにくいですが、幅45cm、長さ70cm、厚さ16cmと大きな厚盤で、しかも生木ということでかなり重いです。測っていませんが、40㎏くらいあったかもしれないです。木表の方は樹皮と苔が残っており、配送業者のお兄さんも「これは何ですか?」と不思議そうにしていました。

材木は買い方にいくつか種類があり、一番一般的なのは乾燥材の板で買う、もうひとつは今回のように生木で買う、さらに丸太で買うというパターンもあります。
リスクと価格が反比例の関係にあり、単価が最も安いのが丸太買いですが、中身が見えない。乾燥材は木目を直接確認でき、またすぐに使えます。しかし高いです。今回の生木の厚盤はその中間で、乾燥材よりは安いですが、中身が完全には分からないのと、無事に乾燥させることができるかどうかがこちら次第。ひどければ割れがたくさん入って使い物にならないリスクがあります。

先ほどの材木店さんに相談すると、やはり盤のまま放置すると割れやすいとのことで、なるべく早く薄い板にして乾燥を促進した方がよいとのことで、次回は製材です。

2024/02/20ブレンド

私は遊びや趣味が少ない方ですが、この10年ほどで急にハマったのが園芸、特に山野草の栽培です。以前にコラムにも書きましたが、前職の会社のお隣さんが山野草の会の会長という縁で、山野草を色々と教えていただき、今では工房の前のスペースに大量の植木鉢が並んでいます。

植物栽培で欠かせないのが水やりと植え替えですが、山野草の植え替えはこの早春が一番のシーズンです。植え替えは本当は午前中に済ますのがよいのですが、さすがに日中は仕事をしないといけませんので(笑)、夜にちょこちょこと進めています。

植え替えに使う土は、赤玉土、鹿沼土、軽石、腐葉土、あとは肥料や調整剤など。最近はホームセンターでも培養土が充実していますので、培養土を買ってくれば手間もかからず簡単ですが、なんとなくそういうことじゃないと言いますか、自分で単用土をブレンドするのが楽しいのですね。去年は蒸れてしまったから赤玉の割合を減らして軽石を足そうとか、軽石入れ過ぎてガラガラの土で根張りが悪かったとか、色々出てくる問題を自分で考えて改善点を探す。これも結局職人の性なのかもしれません。

2024/02/10少し変わった

いきなりですが、この駒木地の写真をご覧ください。

黄楊は黄楊ですが、ちょっと不思議な感じがしませんか?

実はこれ薩摩黄楊なんですが、目が薩摩黄楊にしてはものすごく細かいです。ぱっと見だと島黄楊の根柾などとも間違えそうですが、柾目の荒い部分を見るとやはり薩摩黄楊の特徴が出ています。詳しい方だと小黄楊とか薩摩黄楊の自然木をご存じかと思いますが、おそらくその系統ではないかと思います。

一般的な薩摩黄楊(左)と比較するとこんな感じです。

一昨年、薩摩黄楊として原木で仕入れていますので確証があるわけではないのですが、植林の薩摩黄楊でこの目の細かさはあまりないのではないかと思います。原木をミカン割しているときから少し気にはなっていましたが、木地に仕立ててみるとやはりそうではないかと思っています。

こちらの木地はご依頼をいただいた作品で大きめに整形してあります。味よく仕上がればと思っています。

2024/01/30区切り

私は駒の仕事と木工芸の仕事と併せて専門学校の先生(助手)をしています。先生と恰好を付けて言っても、木工芸専攻の担当ですので木工芸の仕事の一環と言えばそうかもしれません。

先生の仕事に就いたのは4年前。まさにコロナで初めて緊急事態宣言が出ていた時期で、春に赴任するも職員会議も中止、入学式も中止、6月になってやっと授業が始まる。そんなスタートでした。マスクの着用がほぼ義務づけられている状況で、学生たちとは互いの顔も上半分しか見えない。木工を教えるにはどうしても手取り足取り教える必要がありますが、ソーシャルディスタンスや手指のこまめな消毒が叫ばれていた時期で、なんともやりにくさがありました。

そんな大変な時期に入学した学生たちも今年度4年生となり、ついに先日最後の卒業制作を作り終え、4年間のカリキュラムを修了しました。鉋も砥石も触れたことのない状態から、立派な作品を作り上げるまでに成長した彼らと作品たちを見ると感慨深いです。贔屓するわけではないですが、自分と同じ時期に入った子たちを見送るのはやはり少し特別な感じがしていて、これまで他の学年の実習も担当しましたが年度を終えた時の気持ちが少し違う気がしています。

彼らの卒業制作は京都市内の施設で展示されますので、宜しければご覧ください。
『京都伝統工芸大学校 第28回卒業修了制作展』

先生の仕事自体は今後も続く(はず)ので、春からはまた新たな気持ちで新入生や進級した2~4年生と工芸に励みたいと思っています。