2024/03/20サビの研ぎ出し

久しぶりに盛り上げ駒を制作します。
現在の工程はサビで埋めたところです。3回に分けて埋め込み、ムロでしっかり乾燥させます。

研ぎ出しの目安は表面を爪で引っ掻いてみて、白っぽい筋が付くようであればしっかり固まっているので研ぎだせます。一応注意ですが、サビで埋めた翌日とかにこれをやってしまうとサビを削り取ってしまう可能性がありますし、未乾燥のサビが爪の間に入ってカブレます。あくまで数日~1週間は硬化させた後という前提でお考え下さい。

研ぎ出すペーパーはコバックスの240番。粗目ですが、硬いサビもガンガン研げます。サビの研ぎ出しは一旦240番で字母紙の表面まで下して、追加でムロで乾燥させてから400~600番あたりで木地まで研ぎ出す手順で行っています。

研ぎ出した後です。書体は長禄でした。

見ての通り研げていない部分が沢山あります。杢が出た木地でして、ムロの湿度で木地が曲がるためこういう現象になります。ここから無理に進めると字が細くなりますから、木口の目止めを落として、湿度の低い環境にしばらく置いて木地の狂いを取ります。これは仕方ない現象なので、早く進めたいのも山々ですがぐっとこらえます。

そういえば、昨年取材を受けた「明日への扉」の撮影中でも同じような場面で研ぎ出し時に研ぎきれないシーンがあって、先ほどの内容を説明していましたらディレクターさんの目がキラッと光りまして、ミスとまでは言いませんが苦労ポイントとしてカットが使われまして、「乾燥がわずかに足りず―――」というナレーションが入っていました。番組のコンセプトとしては師匠との関係性、まだ師匠にしかできないとか、師匠にアドバイスを求めるようなことも重要な要素だったんですが、私の場合は師匠がおらず独学での制作だったため、どこかでそういうシーンが必要だったのかな、と勝手な想像ながら回想しています。