2024/11/30木地成形つづき

木地成形の続きです。

木工の成形はまず「基準面」を作ることから始まります。基準面を作り、そこを基準に第二基準面、幅を定め、長さを定める順で進めます。
駒木地の場合は、まず駒尻を基準面にとります。その次に治具を用いて側面の片方を切ります。

その次は治具で幅を定め、反対側の側面も切ります。
そして剣先用の治具を設定して剣先を切ります。

この作業はこのような治具を使うと綺麗に加工することができます。トグルクランプはもちろん必須です。

五角形に成形できました。
私の製法はこの時点ですでに五角形が仕上がりの寸法になっているのが特徴だと思います。

このあとはサンダーを使ってテーパー加工をしていきます。

 

2024/11/24木地成形

また更新の期間が空いてしまいました。11月もまた月前半の職人仕事が異常に忙しく、更新の時間どころか、10日や20日であることすら忘れていました。心を亡くすと書いて、「忙」「忘」、漢字はよくできています。

職人仕事も一段落し、駒台の拭き漆の続きや次作の駒木地製作を行っています。

こちらは事前に板材に駒形を書き込んであります。先日のブログで丸太からミカン割りした話を書きましたが、板材にしたものは少なくとも数年は低湿度の部屋で保管します。今回は2021~2022年に仕入れした材を成形していきます。

まずは五角形にカットします。その際に用いるのは丸ノコ盤。うちで使うのはこちらの「ペティワーク」です。駒木地用の治具がすでに固定されていますが、右側のアルミ定盤をベアリングでスライドできる機構になっています。ペティワークはスライド機構の精度とカット精度の高さに定評があります。工房開設当初は導入しない予定でしたが、ご縁あり導入。今となってはこの作業に欠かせない重要な機械です。

中央上に写っているのが丸ノコで、高速回転しています。手前の白い治具は駒木地を五角形に切るために治具です。

反対から見た様子です。材料の固定はトグルクランプを持ちます。3センチほどの小さな木地を手で押さえて切るのは大変危険なので、このような治具やクランプは必須になります。

2024/10/30穴埋め

先日届いた島黄楊を順次ミカン割して製材を進めています。

今回はこんな感じの上等な虎斑も取ることができました。

こちらは赤柾として仕入れた丸太から取れた板です。赤柾は丸太の一部からしか赤い部分がでませんので、写真のように普通の柾目も取れます。というより7割くらいは普通の柾目で、赤柾は残りの3割あれば御の字。まあこれは想定内です。

痛いのはこういうパターンで、虎斑材として買った丸太を板にしてみたらほとんどただの柾目だった時です。半割という丸太を半分に割ったもので買っていますので切り口から虎斑は確認できていましたが、中は斑が無かったり、意外と薄かったり。。。丸太買いはそのリスクもあるわけで「仕方ないか」と割り切るのですが、困るのはこの材の価格設定です。詳しい金額は言えませんが、虎斑材は並材の5~10倍くらいの値段がします。それで板にしてみたら普通の柾目だった時、普通の柾目で虎斑の価格にはできないので、並材の価格に合わせます。しかしそれでは足が出てしまいますので、この材の損失は全額とは言わなくともいくらかは綺麗な杢が出た上述の虎斑や赤柾に上乗せして穴埋めするしかありません。結果、いい杢の出た材は材料費がグンと上がってしまうという事情につながるわけです。

逆に全部当たりの木だったらそういう穴埋めが発生しないので、上物の価格を下げられるのですが、そうではないから難しいです。

ところで選挙のニュースを見ていて、当選した議員さんたちの万歳三唱が特徴的なのに気づきます。肘を伸ばして手のひらは内側を向けて万歳しています。実は万歳には正式なフォームがあって、「万歳三唱令」という明治時代の太政官布告に詳しく書かれていて、それに倣うとその形になります。

というのは冗談で、この万歳三唱令、文書の存在は事実ですが、偽書であり明治時代の布告ということや万歳の正式な形などは全くのデタラメ。90年代にとある人物が遊びで作った文章が巡り巡って文字通り「嘘から出た実」になったそうです。一部本物と勘違いした人もいたそうですが、さすがに国会議員にもなる人はこのくらいの情報リテラシーはあるでしょうから、万歳三唱令が偽書であることはご存じでしょう。
では何故、万歳三唱令に一部倣った万歳が残っているのか?万歳の形は「両手を頭の上にあげる」こと以外は決まった形が無く、全くの自由。しかしその全くの自由というのが逆に気持ちが悪く、無意識に誰かに形を定めてほしいというバイアスが働くことで、冗談とは分かっていつつも万歳三唱令に倣ってしまうというのが一つの説のようです。

これもまた穴埋めだなと思った週末でした。

2024/10/20今年の島黄楊

1か月ぶりの投稿です。
今年の10月は例の職人仕事が過去最高に忙しく、納品日ギリギリまで何日も徹夜をしてやっとというレベルでした。パートさんや家族の協力もありなんとか乗り切りました。毎月このペースならもう一人従業員が必要ですが、毎月このペースとは限らず、仕事が落ち着いてしまうと人件費が出ないのが難しいところですね。。。

さて、先日島黄楊の丸太が届きました。
駒になるのはゆっくりですが、将来への投資も込めて毎年買える分だけ買っています。

こんな感じで「御蔵島産」のテープでグルグル巻かれて届きます。毎年配送のおじちゃんに不思議そうな顔をされますね。

開けてみると今回のはひとつひとつは小さめで数が多い印象です。

丸太の方は虎斑と赤材を仕入れました。

虎斑は結構濃い目の杢が見えるので楽しみです。ただ手と比べて分かるように小径で、さらに黒いシミも所々に見られるので、どのくらいの枚数が確保できるか。。。

赤材の方はアテ材らしく曲がった部分です。赤柾は木のアテという部分が使われており、アテは曲がった部分に見られます。こちらも赤柾は確認できますが、上半分は葉節が多く、木取りが難しそうです。

ダンボールの中身は根っこの輪切りです。ほんとにチェーンソーで切りっぱなしのゴロゴロとした塊が入っています。こちらも写真のように拳サイズのものが多めです。根っこは小さくても面白い杢が出ることがあるので、頑張って板にしますが、繊維方向が斜行しているものも多いので、製材には手間がかかってしまいます。

ひとまず乾燥した部屋に持ち込んで保管しています。どこかのタイミングでミカン割したいですが、いつになるのやら。。。

2024/09/19材木仕入れ

またバタバタで10日の更新予定がズレてしまいました。今月は先月納品した職人仕事にトラブルがありひどくバタついています。これはまだしばらく続きそうですね。。。まあ先方の指定した素材に問題があってその部分をやり直すという内容で、こちらに非があるというわではないですが、いかんせん作業するのは私ですから時間がとにかく無くなっていきます。今月は駒に触れられるのでしょうか・・・。

8月末のことになりますが、大阪の材木店「みたに」さんのSNSで栃の縮み杢の板が紹介されていて、良さそうだったので問い合わせ。実際に見て確認したいと思ったので翌日京都亀岡から大阪江坂までドライブしてきました。


数年前に受けている駒箱の依頼品に使用しようと思っています。木工の勉強を始めて15年以上になりますが、この期間の内でもキメの整った良い栃の杢も手に入りにくくなりました。以前は大きな盤でもきれいな杢の板が手に入りましたが、今は高いか質が悪いかになってしまいます。また昔は良い材はテーブルや工芸品になる木取りがされていましたが、最近の流行りなのか、ボールペン材や楽器用に小さく加工されたり、レジン材などを浸透、また着色等を施す前提での製材加工もされており妙に使いにくいサイズになってしまっている印象もあります。

今回は5~60センチの長さでゴロっと厚みもあったので、駒箱の他いろいろ作ることができそうで楽しみな材料です。