2026/06/20食わず嫌い

昨年秋ごろから駒台や駒箱の拭き漆を続けています。ご依頼をいただいてから4年以上が経過してしまいあまりに申し訳ない。。。ようやく完成が見えてきたところです。

拭き漆にもいろいろあり、今回は桑にあまり色を付けないタイプの拭き漆を施しています。この場合は生漆ではなく透漆を調合しながらやっていくのですが、これがなかなか曲者で乾燥に時間がかかります。生漆であれば下地なら数日、仕上げ工程なら半日程度で乾くところ、この作業に使う透漆は下地が乾くのに最低1週間は見ておきたいような漆で、焦って日を短くしても下地がボヤけて結局仕上げ工程でツケを払うことになるので、じっくり待つことが重要になります。
で、摺りをして乾くのを待っているうちにまた職人仕事をしないといけない時期が来てしまい半月ほど空けてから、研ぎ、摺り、また職人仕事の時期が―――とループして下地工程に数か月を要します。

春頃に工芸会の漆の作家先生に話を聞く機会があり、その時にMR漆を使われている話を聞きました。MR漆自体は私が工芸に関わり始めたころにはすでにありましたが、なんかこう、漆の素材感に対して人の手が入りすぎているような気がしてしまって、食わず嫌いといいますか、何となく食指が動かなかったんですね。ですが、ちゃんとお話を聞いてみるとむしろ漆の特性をより生かせるように精製がなされているということを理解し、次の日には京都の漆屋へ走り購入しました。

早速使ってみますと、これがなかなか良い。漆屋さんは完全な拭き漆向きではないという説明をされていて、確かに硬さや乾燥の速さなど多少のクセがあり、溶剤で軟化したり、他の漆と調合して調子を合わせる必要がある場合もありますが、このあたりは逆にどの漆にも手に合う合わないはありますから、特に問題ではありません。何より塗膜がしっかりと締まる感覚があることと、乾燥速度が透き漆にしては早く、工程を進めやすいことが大きなメリットでした。初めからこの漆を採用していればもう少し下地工程も早く進められたかも、と今更思っています。

さて、もう少し頑張って仕上げます。

2026/05/28新聞に掲載していただきました

2026年5月14日発行の朝日新聞近畿版の「桂天吾が行く」というコーナーにて紹介していただきました。記事はWEBでも見ることができるようです。

藤井聡太さんが指した将棋駒、36歳駒師が独学で制作 桂天吾がゆく

2025/09/03御礼【グループ展終了しました】

8/27~9/1に京都髙島屋にて開催の「木工芸の技と美」展は無事に終了いたしました。
お越しいただきました皆様、高島屋様、開催にご協力くださった皆様に感謝申し上げます。

今回の展示会で展示させていただきました将棋駒、カップには書体やデザインなど新しい試みを取り入れて制作しました。以前に将棋駒をご依頼いただいた方にもお越しいただき、お話させていただく中で貴重なご意見をいただくことができ、今後の制作の励みとなりました。なかなか展示会に出品する機会も少なく、作品を見ていただく中で勉強になることが沢山あります。

改めて皆さまに御礼申し上げます。ありがとうございました。

2025/08/23グループ展出品作品のご紹介

先日お知らせしました京都高島屋にて開催されるグループ展『木工芸の技と美』展に出品予定の作品をご紹介します。

①飾り箱「metamorphose」
こちらは以前に日本伝統工芸展に出品した作品で、工芸会正会員に認定を受けた思い出深い作品です。少し珍しいタモの縮み杢に黒漆で拭き漆を施し、内箱はトチの白さを生かした造りにして変化をつけ、蛹から蝶が羽化する「変態」をモチーフに構想しました。

②欅拭き漆駒箱
造りは一般的な駒箱です。木味の良い欅の玉杢と黒柿の回線がアクセントの作品です。持ってみると結構軽いのもポイントだったりします。

③将棋駒(桂洲書彫駒中国黄楊赤柾)
今回初めて発表するオリジナル書体です。江戸時代の書家・伊藤桂洲の千字文等の資料を基に字母を仕立てました。構想~導入のあたりはコラムにも書きましたが、そこから数年かけてコツコツと字母と彫り駒の制作を進めてこの展示会でお披露目させていただきます。

④「花筏」カップ&ソーサー
今回の展示会に合わせて制作した作品で、葉っぱの上に実をつける「ハナイカダ」という低木植物をモチーフに手つきのカップと葉型のソーサーをデザインしました。普段は将棋駒と指物の仕事ばかりで、丸い挽物やノミと鉋で自由に削り出す刳り物は滅多にやりませんが、今回この作品の構想があって制作してみました。ソーサーは樹種が2種類、カップの方はデザイン違いが2種類を拭き漆の色違いを2種類ご用意しています。

展示会概要は以下の通りです。

■開催概要■
名称:「木工芸の技と美」
会場:京都髙島屋 6階美術画廊
日時:2025年8月27日(水)~9月1日(月) 午前10時~午後8時
出品作家:天野豊・市川正人・甲斐幸太郎・住谷考蔵
疋田達矢・松原輝・松本高次・宮本貞治 (50音順・敬称略)

私は8月31日(10時から15時)と9月1日(同)に当番にて会場に居ります。
お時間がございましたらご高覧いただけますと幸いです。

2025/01/10丸太買い

年末に私の専門学校の同期で同じく木工家をしているI氏から、兵庫県の材木市場で桐の丸太が出ており買わないかというオファーがあり、買うのはほぼ確定でしたが「一応」見てから決めるということで日の出前に出発して2時間ほどかけて市場まで見に行ってきました。ざっと見て、私なりに大きな問題が無いのを確認して購入し、市場の人にI氏のトラックに積んでもらいます。

丸太のまま工房に持って帰ってもどうしようもないので、I氏の紹介で製材所に持ち込んで板に加工してもらいました。

丸太をスライスしていくと木目が現れ、どんな板か初めて知ることができます。曲がっていて節もあり、一見歩留まりの悪そうな丸太でしたが、意外や意外、綺麗な木目で当たりの丸太だったようです。

板に加工してもらった材は再びI氏のトラックに積み込んでもらい、2時間半かけて私の工房まで運んでもらいました。

工房に到着後はI氏と二人で板を下ろします。桐は軽い木として有名ですが、丸太から板にしたばかりのいわゆる「生木」と呼ばれる状態のものは水分を多分に含み、下手な広葉樹よりもよっぽど重たいです。ここから1~2年かけて乾燥させて用材になるのを待ちます。

桐材はただ乾かすだけではなく「あく抜き」が必要であることが他の木材を違う点になります。あく抜きの方法は様々ありますが、今回はなじみの桐材屋さんにおすすめの乾し方を教えてもらい、その通りやってみることにしました。

翌日、ホームセンターに走り単管パイプを入手。棚を組み製材してもらった桐材を写真のように縦に並べました。板と板の間には空気が通るように桟木をかませています。普通木材の乾燥は濡れないように屋根の下で行いますが、桐材の場合はあえて雨ざらしにして、雨風にさらすことであく抜きができるようです。

ひとりで2トン分くらいの材木と単管パイプを右へ左へ動かす作業はなかなかの重労働でした。無事にあく抜きと乾燥ができるよう願うばかりです。